よく「トリマーさんって訓練のようなコマンドは使うの?」と聞かれることがあります。その質問の答えは、使いません。
トリマーと訓練士は、どちらも「犬と関わる専門職」ですが、仕事の目的も内容も異なります。訓練士さんがコマンドやリードを使って地面にいる犬に何かを教えるのに対し、トリマーは「左手」と「五感」でテーブルの上にいる犬を導きます。
左手は、テーブルの上に立っている犬に対して“見えない壁”をつくる役割を持ち、犬の緊張・力のかかり具合・動きを瞬時に察知するセンサーです。トリミング中の様子を見ているとただ支えているだけのように見えますが、実際には全神経を集中させ、犬を感じ取りながらコントロールしています。
また、トリマーは五感を駆使します。たとえば顔のカットをしているときでも、犬がどの位置に立っているか、どの方向に重心をかけているか、筋肉がどの程度こわばっているか、いつ動き出しそうかなどを瞬時に感じ取ります。これは知識だけでは辿り着けない、何万頭という現場経験の積み重ねによる「経験則」によるものです。
知識は大事。ですが、使わなければただの説明書を頭に保管しているようなものです。知識を暗中模索の正解のない現場で活かし、自分の感覚として体得できたものが本当の技術。それは知識が知恵に変わった瞬間であり、応用がきく“生きた技術”です。
本題です。一般化されていない「付き添いグルーミング」というキキの取り組み。これは当たり前のものではなく追加料金のない特別な形のサポートです(慣れてくると当然の権利のように感じてしまう方もいますが…)。
付き添いはサービスの一部として提供しているわけではないため安易に「付き添いできますよ」とはお伝えしていません。また代金を支払えばやってもらえるという権利でもなんでもありません。
飼い主さんが施術中に一緒に居たい気持ちはわかりますが、むしろ、いないほうがスムーズだったり犬の負担が軽減することもあります。私もやりやすいです。
またキキのトリマーは、上記に書いたように全神経を集中し、犬の細かな変化を感じ取りながら施術を進めています。だからこそ安心してご愛犬をお預けください。